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2009年02月

【Book Review】『文字講座』

ほんの数ヶ月前までフォントの違いに対して、無頓着でした。それが、今、なぜか「文字」に対して静かなるマイブームが起きています。

というのも今、簡単な文字組版をすることがあるのですが、その際、いつも文字周りでうんうん唸ることが多く、模索し、迷走します。
僕は何かをやるときに何かしらの基準軸を設けて、それを振りながら仮説立てし、実行して、反省、修正を加えるというプロセスを経るのが好ましいと思っているのですが、いかんせんフォントに関しては全く持ってどうしようもない状態が続いて来ました。


で、件の本。
そうそうたるアートディレクターのリレー講義を本にしたものみたいで、制作現場からの生の声はもちろん、実際にフォントを作る立場の人たちからの声もとても参考になります。

最終的に、自分なりにこの本を読んで納得した結論は、「フォントはあくまで素材の一つである」。結局、表現したいコンセプトや用途が先にあり、フォントはそれを表現するためにふさわしいものを選ぶべき、ということです。
今までは色々な人が発する、「helveticaが」「新ゴが」「MSゴシックなんて」というような言葉を鵜呑みにしてきましたが、そんなもんじゃないんだなって、よくよく考えればごくごく当たり前の結論に達しました。
(まぁ、ウェブだとシステムフォントが大方採用されるから、フォントなんて、、、みたいに思っていたというのもありましたが。。。)


個人的にはフォントが作られて来た歴史的な背景や、その時代の制作者の思いやストーリーが結構に楽しめました。
そのフォントが出来てきた背景が分かれば、それを一つの基準に据える事ができるなぁということを考え、テンションがあがりました。都度都度色々、調べて行こうと思います。


そういえば全くもって蛇足的な話なのですが、
(別にすべてを検証しているわけではないですが)ここ数年前から講談社の文庫本に読み辛さを感じます。
読みやすいようにとフォントサイズを大きくしたのはまぁいいとして、周辺余白をきちんと取っていないので親指が文字にひっかかる、本文の文字が明朝体なのは良いとしてウエイト(太さ)が若干太くて、長く読むものとしては、目が疲れる・・・という気がします。
別の出版社で、新書を編集者がインデザインで作っているという話を聞きました。スピードとコストの問題なのでしょうが、同様の事が起こっているのかな。。。

もう少し可読性を挙げてほしいところです。

技術の発達は専門性を下げ、そしてそれは良い仕様書に基づけば、うまく作用すると思うのですが、逆も起こりうる、ということですよね。


文字講座
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5 デザイナー必見!あのクリエイターのからの文字のお話。

【Book Review】『佐藤可士和の超整理術』『1冊まるごと佐藤可士和。』

ちょっと今更、という気もしますが、文化庁のメディア芸術祭を見に国立新美術館に行った際、メディアショップで佐藤可士和さんの本を2冊買いました。


アートディクレターの整理術って、という気もしつつも購入。
読んでみると、物理的な整理にももちろん言及はされてありますが、
本質的にはクライアントのRFP(requirement for proposal)を明確にするためのディレクションポリシーや(そこまで具体的な言及ではない気がしますが)手法について書かれてます。


やはり一線で活躍する人は、決して表面的ではない、本質的なビジョン・コンセプトを突き詰め(情報収集、仮説立て、検証)るのだなぁと感心。
仕事をしていると、担当窓口になるクライアントの満足に応えたら「事済む」こともあるのですが、やはりそれこそ実に表面的であり、クライアントと喧嘩してでも、本来のファンダメンタルなクライアントニーズを汲み取る事が大事なんだなぁと改めて感じました。

結局、本質的を押さえるから、結果につながり、結果が出るから、次につながる。

言われてみれば「当たり前」なのですが、日々の仕事をルーティンにしてしまう終業ではそれはとても見落としがちで、佐藤可士和さんは、実に本質的なディレクターなんだと、感嘆します。

仕事している人にとっては、新しい発見というより、見えているものを見落としていた自分に気が付ける本なのではないかと。

あと、実に理系的というか、システム的な発想部分も好きです。





限定的にならずに、曖昧な感じで投げかけられたら・・・『Let's go home.』について

そういえば写真冊子を発行した宣伝をしていないことの指摘を受けました。
確かに言われてみれば、熱海の会期中だったので特に宣伝らしいことしていないなーということで。


出版元・気天舎さんのホームページへのリンクです。

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初めての人によく何を撮っているんですか?と聞かれます。
気分によって言い回しや前置きがすごく変わるのですが、
(ex.仕事か個人か、によっても変わります)
概ね最終的には、「人」に行きつきます。

で、この本を見てもらうと、「え? これって、風景ですよね」と反応されます。


まぁ、確かにその通りなのですが、僕が風景や静物を(個人として)撮るときは、
あくまで自分だったり、他の人の「心情」を表現したいと思っています。
(というか、その主観的な視線なしで、僕は自分の写真を見れない)

というわけで、結局は、僕にとってはあくまで「人」の延長であり、
広義では「人」という風に捉えています。

この本は、僕の大切な友人(先輩)の、大切な空間を撮ったものです。
だから、僕にとっては「人」なんです。人との関係性の中で生まれたものですから。

で、追記、ですが、この本に関しては、付加的なテーマも設けていて、
その友人にとっての大切に思う空間と同じものが、他の人にとってもあるとして、
この写真集を見たときに、自分の大切なものを思い起こすような感覚を持ってもらいたいな、という想いがあり、
だから、限定的にならずに、曖昧な感じで投げかけられたと(作者は)思っています。

【BookReview】「写真の読み方」(名取洋之助著)

  • 2009-02-04 (水)
  • Book


「写真の読み方」というタイトルに惹かれたというより、著者、名取洋之助に惹かれて購入。
アンコール復刻ということで表紙も緑と、岩波新書でも珍しい色。


日本の写真界の草創期といえば、木村伊兵衛や土門拳が著名だが、
名取洋之助も同時期の人で、世界からすると名前が出たのは二人よりも早く、
ドイツ留学中に目覚めた写真でドイツのジャーナル誌でデビューし、
『ライフ』の専属カメラマンとしても活躍した。

帰国してからは『日本工房』という事務所を構え、木村伊兵衛、土門拳、三木淳など、今や名だたる日本の写真賞の冠になる人たちを巻き込んで写真を活動を行っていた。
(3~4年前に、名取洋之助賞が遅ればせながら創設されました)


実は、私は個人として名取洋之助の撮影スタイルに共感する部分が割りと強いのですが、
それは例えば、彼が「純粋な写真家」というよりは、写真というツールを武器にもった「企画屋」であり、「編集者」であり、「アートディレクター」であるという点。
写真と+α(ex.言葉、構成、デザイン... etc)を用いて訴求力を強めていくというスタンスを取るからです。
確かに「一枚の写真の訴求力」となった時、木村伊兵衛、土門拳、ロバートキャパの撮った写真ほどに心に染みいりはしないのですが、翻って、合わせ技で表現に伸びを出す、というのは、写真単独での表現に力不足を感じないわけにはいかず、色々な表現手段との合わせ技を考えないではいられない僕にとってはすごく(若輩者が厚かましい限りですが)共感する部分があります。

そして、写真を素材の1つとして捉え、総合的にどのように表現をしていくと人に訴求できるか――という観点で語られた名取洋之助の言葉は、とてもコンセプチュアルで、それゆえに、例えばITが発達してきた現在においても、色あせることないメッセージとして伝わってきます。

著者没後から46~47年経つそうですが。
今の時代に重ねて読んでも「そうだよね」と共感する部分も多いです。

戦前・戦後の日本の写真(産業)の歴史という観点でも勉強になります。


※ちなみに全く持って蛇足ですが、個人的に、
名取洋之助の「アートディレクター」的な志向に、反発して(日本工房時代はすごいこき使われていたという話ですし)、土門拳は「絶対リアリズム」という風に傾倒していったのではないかなーとも、想像しています。

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