東北のいまvol.7 「150年の歴史を持つ老舗の造り酒屋」大木代吉(だいきち)本店

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蔵の入り口に立つと強い発酵が薫り、息を吸い込むとむせかえりそうになる。「いらっしゃる方は皆、そうおっしゃるのですが、私たちは慣れてしまっているせいか……」と酒蔵・大木代吉本店の大木雄太さんは笑う。メガネの奥の穏やかな目元が細くなり、口元が広がる。親しさを感じる優しい笑い方をする人だ。

しんと静かな蔵の中。150年近く吸い込んできた日本酒の香が土蔵から漂っている。ただ、普段と違うのは蔵の中ががらんどうなこと。蔵の中の柱にはワイヤーによる補強がされている。

今年の酒造りが終わった初夏の6月に、中にあった貯蔵タンク等を移したのだ。10月下旬から始まる寒づくりに向けて被災した蔵たちの修復・解体をするために。

福島県西白河郡の矢吹にある大木代吉は、1865年(慶應元年)に味噌や醤油を作っていた蔵元からのれん分けを受けて創業。戊辰戦争の時には、矢吹に本陣を構えた奥羽越列藩度同盟側に酒を振る舞った歴史を持つ。

それが震災で大小14棟あった蔵の5棟が全壊。その他の蔵も半壊等の被害を受けた。寒造りの大木代吉では、3月は酒造りの終盤。貯蔵タンクにある日本酒を救い出さなければいけなかった。雄太さんは、地震後、傾いたタンクの隙間を這うように蔵に入った。タンクに付いている酒を出し入れするノミが使えず、タンクの上の開口部からポンプを使って安全なタンクに移し替えた。このやり方では時間がかかる。「蔵が崩れてくるかもしれない」思いに駆られながらも、タンクからゆるやかに吸い上げられる日本酒を見つめていた。

大木代吉が作る日本酒は種類が豊富だが、雄太さんが心がけているのは「普段飲み」できる日本酒。

「芳醇」と表現されるフルーティーな種類は苦手だと雄太さんは笑う。フルーティーな日本酒は、ハレ日には好まれるが、日常的に飲むには我が強い。「普段のみ」に合うのは、毎日の料理を引き立て、ほっとさせる濃醇な口当たりだ。

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東北復興新聞』で連載している「東北のいま」のvol.7で福島県の大木代吉本店を取材させていただいた時の写真&文章です。

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